#013 薬局ヒヤリハット事業〜2019年年報より②

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薬局ヒヤリハット事例の年報
100日連続ブログ更新チャレンジ - 13日目 #Challenge100

 

昨日に引き続き、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業2019年年報から抜粋した内容のご紹介です。

本日は「分析の現況」から分析対象として設定された4つのテーマの分析結果をご覧ください。

薬局ヒヤリハット事例の年報
100日連続ブログ更新チャレンジ - 12日目 #Challenge100 先日、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業で2019年年報が公開されました。 そこで本日は、年報
昨日の記事はこちらからご覧ください

妊婦に禁忌の薬剤に関する疑義照会の事例

図表Ⅲ-2-2 処方された医薬品

添付文書の禁忌の記載内容 医薬品名 報告回数
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人/女性 ドンペリドン錠5mg/10mg
ナウゼリン錠10/OD錠10
ナウゼリン坐剤30/60
45 106
クラビット錠250mg/500mg
レボフロキサシン錠500mg
20
ジェニナック錠200mg 13
オゼックス錠150
トスフロキサシントシル酸塩錠75mg/150mg
8
ボルタレン錠25mg 4
バクタ配合錠 2
ベタニス錠25mg/50mg 2
アジルバ錠20mg 1
アタラックス-Pカプセル25mg 1
アムロジピンOD5mg 1
アレギサール錠5mg 1
エディロールカプセル0.5μg 1
エピデュオゲル 1
サイトテック錠200 1
シプロフロキサシン錠100mg 1
スオード錠100 1
ディフェリンゲル0.1% 1
プロスタンディン軟膏0.003% 1
メチルエルゴメトリンマレイン酸塩錠0.125mg 1
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(原則禁忌) バルプロ酸Na徐放B錠200mg
バルプロ酸ナトリウムSR錠200mg
2
妊婦(特に約3ヵ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人 トラニラストカプセル100mg
リザベンカプセル100mg
2
妊娠3カ月以内又は妊娠を希望する婦人へのビタミンA 5,000IU/日以上の投与(ビタミンA欠乏症の婦人は除く) チョコラA錠1万単位 2
妊娠3ヵ月以内の婦人 クロモグリク酸Na点眼液2%「わかもと」 1
妊娠16週未満の妊婦 リトドリン塩酸塩錠5mg 1
妊婦(妊娠20週未満)又は妊娠している可能性のある婦人 アダラートCR錠20mg 1
妊娠後期の婦人/女性 ケトプロフェンテープ20mg/テープ40mg
モーラステープ20mg/テープL40mg
モーラスパップ30mg/パップXR120mg
15 18
イブプロフェン錠100mg
ブルフェン錠100/200
3
妊娠末期の婦人 ロキソニン錠60mg
ロキソプロフェンNa錠60mg
8 9
ポンタールカプセル250mg 1
出産予定日12週以内の妊婦 バイアスピリン錠100mg 1
合計 143

引用元:図表Ⅲー2−2 処方された医薬品 ┃ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2019年年報

事例から学ぶ

■背景・要因

30歳代女性にサイトテック錠200が処方された。患者に、処方された薬剤が妊婦には禁忌であることを伝えると、妊娠を希望していることを聞き取った。処方医に連絡し、サイトテック錠200からムコスタ錠100mgへ変更することを提案したところ、薬剤変更になった。

■背景・要因

患者アンケートなどに妊娠に関する情報の記載はなかったが、薬剤を交付する際、患者から妊娠を希望していることを聞き取ることができたため、処方提案することができた。

■薬局が考えた改善策

妊婦に禁忌の薬剤が処方された場合は、患者アンケートなどに妊娠に関する情報の記載がなくても、患者に妊娠に関するヒアリングを行うことを今後も継続していく。

サイトテック錠100/200の添付文書【使用上の注意】(一部抜粋)

6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与

(1)妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。[ 本剤には子宮収縮作用があり、妊婦で完全又は不完全流産及び子宮出血がみられたとの報告がある。]

ポイント
  • 患者が女性の場合、妊娠に関する情報を聴取することが重要である。特に、妊婦に禁忌となる薬剤が処方された場合は、妊娠の有無だけではなく、妊娠を希望しているかどうかも確認する。
  • 妊娠に関する情報を聴取する際は、患者アンケートや薬剤服用歴だけではなく、最新の状況を直接患者に確認すること、さらに、確認する目的を患者に説明するなどして患者が妊娠に関する情報を伝えやすい環境を整えることが重要である。
  • 薬剤によっては、「妊娠3カ月以内」や「妊娠後期」、「出産予定日12週以内」など、妊娠時期を限定した禁忌の記載がある薬剤がある。これらを調剤する際は、妊娠の時期も含めた詳細な状況を確認する必要がある。そして、このような薬剤の情報は、主治医や患者とも共有しておくことが望ましい。
  • 妊婦が必要な治療を安全に受けられるために、妊婦に禁忌の薬剤だけではなく、妊娠中でも安全に使用できる薬剤も把握しておくことが重要である。そのためには、日頃から最新の情報を収集し、処方監査に反映できるシステムを整えておくことが望ましい。

引用元:事例から学ぶ 妊婦に禁忌の薬剤に関する疑義照会の事例 ┃ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2019年年報

薬袋の記載間違いに関する事例

図表Ⅲ-2-3 間違いがあった薬袋の記載内容

剤形 間違いがあった薬袋の記載内容 件数
内服薬 1回量 91 279
服用時間 62
服用回数 31
医薬品名 30
1 回量と服用回数 15
日数 13
規格・剤形 12
服用日 10
頓用の指示 5
患者氏名 4
中止に関する指示 1
服用方法(経口/舌下) 1
詳細不明 4
外用薬 使用回数 13 47
1回量 12
使用部位 9
医薬品名 5
規格・剤形 4
頓用の指示 2
全量 1
詳細不明 1
注射薬 1回量 9 13
使用時間 4
不明 医薬品名 2
合計 341

引用元:図表Ⅲ-2-3 間違いがあった薬袋の記載内容 ┃ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2019年年報

事例から学ぶ <患者が服用を誤った事例>【1回量の間違い】

■背景・要因

患者にバラシクロビル粒状錠500mg「モチダ」1日6包が処方された。患者を担当しているヘルパーが、薬剤の残量が多いことに疑問を持ち、その確認のために来局した。レセプトコンピュータの入力は1日6包と正しく入力され、調製した薬剤の数量も正しかったが、ヘルパーが持参した薬袋には1日3回1回1包と記載されていたため、患者は薬袋の記載通り1回1包で服用していた。

■背景・要因

患者が帯状疱疹であることはわかっていたが、薬剤を交付する際、薬袋と薬剤情報提供書をみて1回1包ずつ服用するよう説明した。処方された薬剤が多く、他の薬剤は一包化調剤を行っていた。

■薬局が考えた改善策

レセプトコンピュータの設定を変更する。鑑査時に、薬袋と薬剤情報提供書の記載内容を処方箋と照らし合わせて確認する。

ポイント
  • 調製や鑑査の際は処方箋と薬剤の照合などに、交付の際は患者への説明などに意識が向き、薬袋の確認がおろそかになりやすい。
  • 処方箋を見て調剤することは当然のことであり、薬袋や薬剤情報提供書などの確認作業でも処方箋と照らし合せることを怠ってはならない。
  • 患者に薬剤が正しく交付されても、薬袋の記載間違いや情報不足により患者が服用を誤るケースがあることを十分に認識し、薬袋を適切に作成するための具体的な対策を講じることが重要である。
  • レセプトコンピュータを利用して薬袋を作成する際の間違いを防止するためには、処方内容を正しく入力するための手順の作成や、入力内容を正しく薬袋に反映するシステムの設定が有効な対策となる。
  • 薬袋の記載間違いを発見するためには、処方箋と薬袋の照合を誰がいつどのような方法で行うのか手順を決め、遵守することが重要である。また、交付する際に患者と一緒に確認を行うことは、間違いを発見するための有効な手段となる。

引用元:事例から学ぶ 薬袋の記載間違いに関する事例 <患者が服用を誤った事例> ┃ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2019年年報

骨粗鬆症治療薬に関する疑義照会の事例

図表Ⅲ-2-4 ビスホスホネート製剤に関する疑義照会の内容

疑義照会の内容 件数
服用間隔 80
成分・薬効の重複 50
服用時間 19
患者の生活状況 17
患者の服薬状況 9
副作用の発現 8
投与量 7
疾患・病態禁忌 6
残薬の調整 4
再投与までの期間 1
指示内容(横にならない時間) 1
副作用歴 1
漫然とした長期投与 1
合計 204

引用元:図表Ⅲ-2-4 ビスホスホネート製剤に関する疑義照会の内容 ┃ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2019年年報

事例から学ぶ <成分・薬効が重複した事例>

■背景・要因

往診により処方された薬剤を90歳代の患者に届けるため、施設を訪問した。患者はリカルボン錠50mgを月に1回服用しているが、お薬カレンダーにデノタスチュアブル配合錠が入っていた。家族に確認すると、整形外科を受診し、骨粗鬆症の治療のためプラリア皮下注60mgシリンジを投与されたことがわかった。往診している主治医に相談したところ、以前から服用していたリカルボン錠50mgを中止することになった。

■背景・要因

家族の判断により患者は整形外科を受診した。整形外科から処方された薬剤を家族が施設の職員に渡し、施設の職員がお薬カレンダーに薬剤をセットした。

■薬局が考えた改善策

施設から外出して病院を受診する時は、必ずお薬手帳を携帯して受診先の医師に見せるよう指導した。

ポイント
  • 骨粗鬆症の治療は、内科や整形外科などの複数の診療科で行われることや、近年、作用機序の異なる様々な薬剤の投与が可能になったことから、成分や薬効が重複する薬剤が処方される可能性が高くなっている。
  • 外来で投与する注射薬は、お薬手帳に記録されないことが多い。また、製薬企業が提供している骨粗鬆症治療薬に関する患者指導箋などを患者に渡している医療機関もあるが、それを薬局で提示する患者が少ないため、投与された注射薬を薬局の薬剤師が把握することは難しい。
  • 骨粗鬆症の治療が有効かつ安全に実施されるためには、処方される内服薬だけでなく外来で投与される注射薬についても一元的に管理する必要がある。患者に投与されるすべての薬剤の情報をお薬手帳に集約し、患者や医療機関、薬局で情報を共有することが重要である。

引用元:事例から学ぶ 骨粗鬆症治療薬に関する疑義照会の事例 <成分・薬効が重複した事例> ┃ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2019年年報

名称類似に関する事例

図表Ⅲ-2-5 疑義照会に関する事例 ~一般的名称を含む薬剤名で処方された事例~ 頭文字の2文字以上が一致している薬剤の組み合わせ

処方すべきであった薬剤名※1 誤って入力された薬剤名※1 処方された薬剤名※2 件数
エクセラーゼ エクセグラン ゾニサミド 1
クラリ クラリチン ロラタジン 1
シングレア シンメトレル アマンタジン 1
フェロミア フェロベリン ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス 1
ムコスタ ムコダイン L -カルボシステイン 1
ユリーフ ユリノーム ベンズブロマロン 1
合計 6
※1 薬剤名はブランド名で記載した。 ※2 薬剤名は一般的名称で記載した。

引用元:図表Ⅲ-2-5 疑義照会に関する事例 ~一般的名称を含む薬剤名で処方された事例~ ┃ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2019年年報

事例から学ぶ <名称類似に関する事例>

■背景・要因

処方箋にマイスタン錠5mgが記載されていた。てんかんの既往歴のある患者であったため、処方箋通りにマイスタン錠5mgを調剤した。薬剤を交付する時、患者の話と処方内容が食い違うため疑義照会したところ、医師はマイスリー錠5mgを処方するつもりであったことがわかった。医師の処方間違いであった。

■背景・要因

処方医による単純な入力間違いであったが、患者にてんかんの既往歴があったため、薬局での調剤時には間違いに気付かなかった。

■薬局が考えた改善策

過去にもマイスリー錠5mgとマイスタン錠5mgの取り違え事例が複数あったことを病院へ報告した。さらに、マイスリー錠5mgを処方する時は、一般名処方するように依頼し、改善された。薬局でも再度、取り違えの事例について周知徹底した。

ポイント
  • 処方監査を行う際は、お薬手帳や患者からの聞き取りなどから収集した情報をもとに、処方箋に記載された薬剤が医師の処方意図と一致しているか確認することが重要である。
  • 医師がオーダリングシステムなどを用いて処方する際に、名称が類似した薬剤を誤って入力することにより、薬効の全く違う薬剤が処方される危険があることを認識したうえで、処方監査を行う必要がある。
  • 処方内容に対する違和感を見逃さないためには、薬剤の効能・効果や用法・用量について正しい知識を身に付けておくことが重要である。

引用元:事例から学ぶ 名称類似に関する事例 <疑義照会に関する事例> ┃ 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2019年年報

参考サイト

●100日連続更新達成まで、あと87日! #Challenge100

 

※当サイトに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
※当サイトの情報に起因するいかなる損害についても、当社及び情報提供元は一切責任を負いません。利用者ご自身の判断と責任においてご利用ください。

この記事を書いた人

Hiroshi.K
Hiroshi.K
メディカルサーブ株式会社 代表取締役

システムコンサルタント、インストラクター、エンジニア、デザイナー、講師など、いくつもの肩書を兼任。いわゆるプレイングマネジャー。
趣味はマラソン。マラソン歴10年目にしてサブスリーを達成。フルマラソン自己ベストは2:57:40(第8回水戸黄門漫遊マラソン:2023/10/29)
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